本展覧会は、デザイン系学科で推進している「デザインを育てる」プロジェクトの一環として、2022年度に行ったデザイン系学科授業の合同成果発表として実施されています。
「デザインを育てる」とは、21世紀ポスト工業化時代の中で「いかにつくるのか? ということを問うのではなく、これからの社会に必要なこととは何かを問いなおす。新たな価値を発見し仕組みとして創造していくこと。その行為そのものがデザインの本質である。」と位置付け、デザインの新たなあり方を探究しようという試みです。
「デザインを育てる」を始めたころより、社会の情勢はさらに大きく変化しています。地球環境の悪化はまったなしであり、消費と廃棄の問題やそれを変えるサスティナビリティはどんなことにでも必須の条件となってきました。そして、コロナ感染症のように人類を脅かすような危機も日常のものとなり、そういったことを機に、地球を脅かさず自然の中で大きく循環していくものづくりをしていくことが実践されるようになってきました。
また、ITの世界では、DXのように、デジタル空間がビジネスや生活上で、普通の道具のひとつとして縦横無尽にはりめぐらされつつあります。それが効率化だけでなく様々な場所での働き方などを支援できるような社会的道具となるよう展望されていかねばなりません。
さらに、Black Lives Matterに代表されるように、人権に関する問題も、特別な人たちの話ではなく、わたしたちの日常の中で常に考えられねばならないこととなってきました。
そんな、転回(大きな変化)の中で、デザインの果たす役割は何か、あらためて、ここから考えて行こうという意味を託したタイトルです。
各学科では、専門性を超えて、新しい時代に向けて「これからの社会とは、そのためのデザインとは」を問いながら、社会的なアプローチを持った専門的テーマを掲げて演習授業を行い、その成果としてこの展覧会で作品を発表しています。
さらなる大きな転回への序章として、サスティナブル、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)、ローカリティ、コミュニティ、コロナ下のデジタルコミュニケーションを題材としながら、いま、そしてこれからの社会におけるデザインでなすべきことを探求しました。
新しい問いに対する学生たちの真摯な取り組みをどうぞご高覧ください。
デザイン系合同展教員一同
合同講評会の考察・感想
今回の講評会を聞いて感じたことは、皆さんターゲット設定がすごく明確で話がすごく頭に入って来やすかったことです。ターゲットによってとても様々な切り口でのお話が聞けて、私にはとても思いつかなかった様なアイディアもたくさんあったので今後の制作の参考にしていきたいです。
特に印象に残ったのは、給食に関する食品ロスについてのプレゼンです。食品ロスと食器作りは一見関係の無いようなものですが、小学生が進んで食べたくなるような仕組みがとても素敵だなと感じました。
情報デザイン学科 3回生
情報デザイン学科の人の作品は、食をテーマにいろんな観点から考えられていて、着眼点やコンセプトがとても面白くて、こんな見方や考え方もできるということを知ることができました。特に、規格外野菜を売り方を変えることで欠点を愛するという考え方は、一つひとつの野菜にストーリーを感じられ、新しい概念が生まれる良いアイデアでした。
空間演出デザイン学科 3回生
合同講評会に、参加し普段関わることがあまりない情報デザインの学生の作品についてデザインだけではなくデザインに落とし込むまでの過程、中身まで知ることができとても貴重な時間だったなと思います。商品ロスについて、なんとなく知識はあってもCSAという言葉であったりまだまだ知らない事が山ほどあるなと気付かされました。
今回、プロトタイプのような作品になりましたが卒展ではプロトタイプから実装された形のものが求められると思うので、今回の成果物から更に発展させた形で取り組んでいけたらいいなと思います。
空間演出デザイン学科 3回生
空間デザインが何をしているかというのはあまり知らなかったので、今回の機会を得ることが出来て良かったです。誰かの問題を解決するために、自分は何ができるのか。地域の人々と共に何ができるか。そういったことを考えることが出来ました。
自分も一人暮らしで自分だけの献立を考えるだけでも大変なのに家族全員分を考えている主婦の方々は本当にすごいです。「なんでもいい」という言葉で済ませてしまっていた自分の言葉に反省です。嫌なことを嫌なことで留めるのではなくガチャガチャという発想にすることで少しでも楽しめたら、という考えが面白いなと思いました。
防災のバッジという案もとても面白かったですし、収集癖のある私からしたらとても興味の湧く発表でした。防災と言えば日本では当たり前に地震や津波の方がメインに取られることが多く、火災と聞くと何をしたらいいのかというのがあまり私もわかっていませんでした。小学生の時から教えて貰うことできちんとした対処ができるのは本当に良いことだと感じますし、ボランティアでやりたいと考えているということがすごいなと思いました。
認知症というのは遠くて近いものだと思っています。人と話すことが大事という点では喫茶店というのは良い機会になるんだなと感じました。
人と自分のルーティーンにするという考えが本当に面白いと思いましたし、ルーティーンにすることによって、自分と話してて楽しい人などを見つけられたりする、新しい発見が認知症を発症させないようにする効果があると考えると本当に良い考えだと思いました。
粘土で、漬物……???というのがかなり印象的でした。
漬物と言えばぬか漬けなどですが、粘土で作れるとは思いもしませんでした。売れない陶器の処分方法ではなく、その粘土をどうやったら生かせるか、更にそこから使った粘土で再度焼き物に出来るという素晴らしいサイクルだなと思いました。
粘土でつけた漬物と聞くと私も躊躇しそうですが、それはそれでかなり面白い着眼点で、今この世の中ではかなり広がりやすいワードだと思います。
コロナで、普段は楽しいはずの食事が黙食となり、一切話さずに食べるというのは今の小学生はかなり制限されているのだと改めて知りました。残す人も増えそしてそれを教師たちは強くは言えないというなんとも言えない時代になってしまいましたが、そこで自分でお皿を作ってそのお皿で食べようという計画はとても良いなと思いました。食べる時には話せませんが、お皿となると洗った後、「可愛いお皿だね」などという会話が増えるかもしれません。そう考えると1コミュニケーションとしてとてもいいなと感じました。
交通機関を自由に楽に使えるような工夫という着眼点が面白いなと感じました。私はコミュニティバスというものを初めて知りました。バスを予約やレンタルすることが先ずできることに驚きましたが確かに、自分だったら少し躊躇いがあるかもしれません。ですが、もしそのコミュニティバスに自分の私物を持ち込めたら少しは過ごしやすくなるのでは?つり革も普通の白いつり革ではなくなにかカバーをしてみよう。たったひと工夫で躊躇いが解消されるという、第2の家というコンセプトが面白いなと感じました。
ニートというのは、あまりいい響きではないと思います。外で会話をしなければ人との関わりは無くなりますし、どんどん居場所は狭くなると思います。
そのうえでその人が今何をしてるか、何をやっていたか、それを伝えるスタンプツールというのは良いなと思いました。そもそも、LINEやTwitterなどにもある機能ではありますが、自分らしくというものを考えるきっかけにもなるというのは面白い考えだなと感じました。
情報デザイン学科 3回生
空間デザイン学科が何をしているのか全然知らなかったけれど、自分たちの活動と同じように社会の問題を解決して、よりよくするために何ができるのを考えているのかが分かりました。どのアイディアも面白く、実際にあったらいいなと思うものばかりでした。
情報デザイン学科 3回生
これまで専門科目の授業で他の学科の学生と交流することがなかったので、どんな取り組みをされているのかが少しでも知ることができてよかったです。またいつもとは違う人からコメントをいただけたのも新鮮でした。情報デザイン学科の先生もおっしゃっていましたが、こうした他学科との交流がもっと増えると良いなと個人的には思いました。空間演出デザイン学科と他の学科の学生が得意なこと、力を入れている部分はそれぞれ違うと思いますし、今日の発表でも、インプットの方法は近いものでしたが、アウトプットでの魅せ方でそれぞれ違う良さが出ていているなと感じました。
空間演出デザイン学科 3回生
今回は参加できる時間に限りがあり、全てを聞くことができませんでしたが別の学科の方からの感想や、意見はとても参考になりました。特に今までは何気なく発表することに力を注いでいたので気づきませんでしたが、自分のアイデアと他の方のアイデアを足すとより面白くなりそうという意見は今回の新しい発見です。また、提案した場所が地元の学生さんからも面白いとの意見を頂けたことは本当に嬉しかったです。
空間演出デザイン学科 3回生
概要
デザイン系学科合同展
「転回する社会とデザインの展望」
デザインを育てるプロジェクト2023
情報デザイン学科
空間演出デザイン学科
会期:
2023年2月15日(土)-28日(日)